絹のハンカチ
それに反し今思いだされるのは、私に仕事を教えてくれた福江市の森 明先生の話だ。
先生は私に「医療を金儲けにするのであれば仕事は教えられない。」と云いました。私はそれを了解して仕事を教えてもらいました。
その約束があって私の柔整鍼灸治療は日本一安かったと思 います。この20年間大病もせず日曜も休まずほとんど年中無休でやれたのは、周囲の人達の力添えと親からもらった健康な体のお陰と感謝している。だから安 くできたのです。
そこで先生の話ですが病人や怪我人からお金をとるのは心苦しい。又、本筋ではない。として20年前健康保険組合の取り決め通り窓口料金を50〜100円で1円単位でおつりを返し、、又、余分な材料費も患者の負担になるとして使いませんでした。
先生の患者への思いやり、真のやさしさ、その純真さは物に例えれば『絹のハンカチ』です。
医療に対するけがれのないきれいな花の生涯でした。私はもうあれ程けがれのない物欲も名誉欲もなく純真な心で医療に取り組む人は見ることはないでしょう。先生はある時私に云った。
「人は貧しくても一生懸命嘘をつかず働けば神様は必ずその日の食事だけは与えてくれる。」と。良寛の 『たくほどに掃き寄せられる落ち葉かな』こんな心境の無欲な人でした。
こういう人は世に名も足跡も残さず徳の山を残し蜃気楼のように消えて行った、これが本当の名医だった。それに続く私は云うならば、まだ欲を捨てよと布施をつのる一級禅師の心境か。
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